ことのは国語教室は、説話文学をベースにした新しい国語学習を提案しています。今回は、その説話文学、特に『今昔物語集』について書きたいと思います。
 日本の説話集は、平安時代はじめの『日本霊異記』が最も古い説話集として知られています。『日本霊異記』は、仏教の教えをわかりやすく伝えるために書かれた説話集です。この流れを受け継ぎながら、世の中の人々のさまざまな生き方を描いた説話集が、『今昔物語集』なのです。『今昔物語集』ができた十二世紀後半は、平安時代末期です。その時期は、貴族の時代から武士の時代へと移り変わる不安定な時期でした。その不安定な時期でも、人々は、笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだりして一生懸命に毎日生きていました。『今昔物語集』は、説話全体に、そのような人々の生き方、想いをちりばめて描かれた説話集なのです。また、『今昔物語集』には、様々な人々が登場します。貴族や武士はもちろん、お坊さんやお百姓さん、猟師や物を売る人、子どもやお年寄り、さらには盗賊やこじきまでもが、登場するのです。登場するのは人間だけではありません。動物や植物、妖怪や物の怪もいきいきとして登場するのです。 『今昔物語集』を読み、学ぶことで、これらの登場する人や物の様々な体験が出来るわけです。子どもたちが長い人生を生きていくうえでの大切な宝物になると思います。

557463_206645842774739_1745000407_n[1] 
鳥獣人物戯画。動物たちが人間のようにいきいきと活動しています。まさに説話文学の世界です。